アンヌ・ソフィー・ピックさんと言えば、今年三ツ星に輝いた女性シェフとして注目の人。お祖父様の代から数えて3代目になるヴァランスの名店PICから4年ぶりの来日を果たしました。とてもお優しいご主人とアシスタントも御一緒です。銀杏の木も黄色に輝く11月上旬、ピックさんの通訳というお仕事のため大坂まで行って参りました。そのご報告です。
11月6日 外食・中食厨房設備フェア2007「食フォーラム2007」( インテックス大坂にて開催)−世界シェフの集いー
京都「菊乃井」のご主人村田吉弘氏、大坂のイタリアン「ポンテベッキオ」オーナーシェフの山根大助氏、イタリア人フードジャーナリストのフランチェスコ・カポッツァさん、そしてアンヌ・ソフィー・ピックさんの4人によるトークセッション。テーマはグローバル化する現在の料理、国境やジャンルを超えてクロスオーバーする各国料理(フレンチ、イタリアン、和食)。
なかなか興味深い、そしてチャレンジャーな話題です。たとえば山根さんはご自分の作るイタリアンには醤油は断固として使わないとか。ピックさんはガラムマサラなど異国のスパイスも使うけれどそれは自分なりの使い方とルールをマスターしているから。美味しくなるならバルサミコもオリーブオイルも使うこともありますとおっしゃる村田氏。今の時代いろいろな国の素材や、最新の調理法がクロスオーバーする中、何をもってフランス料理、イタリア料理、和食と呼ぶのか…。1時間半に及ぶトークをまとめられたコーディネーター、「月刊専門料理」柴田編集長に心から拍手です。柴田さんでなければ取り組めないテーマでした。
11月7日 前日のデモンストレーション(ひめじと小さなバナナのロースト)に引き続き、アンヌ・ソフィー・ピックさん、この日は農事功労賞を受勲されたばかりのドミニク・コルビシェフとの料理コラボレーションでした。なにわ野菜(蕪や蓮根、南瓜や海老芋)、三種類の旬の茸、そして10年熟成の古古味醂と梅味醂に四国香川のくみ上げ湯葉をたずさえて壇上に上がったコルビシェフは、次々と説明しながらピックさんに味見を勧めます。生の蕪をかじったピックさんの目が輝きます!「甘い!蕪じゃないみたい」料理人魂が響き合いました。
くみ上げ湯葉を使って、バターもクリームもパルメザンも使わないでリゾットを作りましょう。コルビシェフが鍋を握ると、「じゃあ私がフォワグラをポワレするわ」とフライパンを握るピックさん。フォワグラは2種類の味醂でデグラセして、なにわ野菜と茸はにぎやかなガルニチュールに。出来上がったリゾットは日本の食材をふんだんに使っているけれど純然たるフレンチ。日仏で活躍する二人のシェフが即興で仕上げた一品でした。
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世界食フォーラムの後、どうしても本場のたこ焼きが食べたくなり、荷物を持ったまま難波のアメリカ村へ。
〆はなぞの台湾カフェで、極彩色のメニューボードからブラックタピオカがボコボコ入ったパフェを注文。
大阪文化はまだまだ深そうです。後ろ髪を引かれながら新幹線に乗りました。