ドメーヌ・カーズ
11月26日、ミシュランガイドの嵐が過ぎ去った先週、また新たなワイン生産者さんとの出会いがありました。
南フランスのラングドックルシヨン地方、リヴサルトで有数のワイナリー、ドメーヌ・カーズから4代目のエマニュエル・カーズさんが来日。ワインテイスティングと専門誌インタビュー通訳のお仕事です。
生産者さんとの出会いはいつも心を豊かにしてくれます。
生命は土とつながっていることに気づかされ、テロワール(その土地の個性)と生産者の思いの数だけワインがあるのです。
そして今回特別なのは、ドメーヌ・カーズがフランスでも最大のビオディナミの生産者であることです。ビオディナミの先駆者的存在、ニコラ・ジョリ氏が世界中で開催しているLa renaissance des apellationsという合同ワインテイスティング会(27日に神楽坂にて)のために来日されました。
ビオディナミとビオ(オーガニック=有機栽培)、この違いを話すととっても長くなるのですが
〜ビオディナミは堆肥を使う有機農法であるだけでなく、畑や醸造の作業を月や星の動きに従い行います。
要は土中の微生物たちがとても活発に動いて酸素も取り込んで土を活性化することで、ブドウ樹が元気で丈夫、しあわせになって健康に熟した果実を実らし、美味しいワインができるというわけです。とても手間のかかることなのですが、カーズさん一家は220ヘクタールという広大な畑を1997年から毎年30ヘクタールずつビオディナミに転換して今に至りました。
テロワールを引き出そうと思ったら見つかった方法がビオディナミだったそうで、地球のこと、自分の娘たちの将来を考えたら行き着いた結論だそうです。ご自身もソーラーシステムの屋根、壁の厚さが45cmで冬でも暖房を使わないで済む家を建てたそうです。ビオディナミというとなんとなく、宗教がかった神秘的なイメージで、一部の人たちだけが信奉しているのか思っていましたが、エマニュエルさんに会って180度イメージがかわりました。とても自然に行き着いた手段、そしてライフスタイルなのです。
エマニュエルさんが手に持っているのはミュスカ・ド・リブザルトというフランスを代表する天然甘味ワインのひとつです。ミュスカとはマスカットのこと。冷た〜く冷やして味わえば、マスカットをかじっているようフレッシュ感。それもそのはず、この甘味はもともとぶどう果実に含まれる甘みでお砂糖など一切加えていないのです。さらに心地よい酸味をともない、ジャスミンのような白い花、白桃、洋梨など白い果肉のフルーツの香り。フォワグラのテリーヌやブルーチーズ、そしてバニラを使ったデザートにピッタリですね。おいしいもの好きにはたまりません。