2009年9月19日

Rentrée

ボルドー、ポムロル シャトー・ル・パンの立派な松の木

今年の夏はなんとなく短かかったような…

気がついたら空気はすっかり秋に入れ替わり、空もずいぶんと高くなり、まだ夏にやり残した事が…と焦燥感にかられるこの頃です。「今年は2週間しかバカンスとれなかったのよ〜」としばらくメールのなかったフランス人のお客様からメッセージ。「2週間かあ〜(ためいき)」。年5週間の休暇が義務のフランスと比べてはいけません。というわけでバカンスから職場復帰したフランス人がモラトリアムに陥るこの時期、ざっとおさらいをしてみると実はとっても充実した夏でした。

ハートアイランド

3年ぶりに沖縄へ。足を伸ばして、石垣島から船で25分、珊瑚が隆起してできた周囲12km余りのハート型の平たんな島、牛の数の方が人より多い?黒島に行ってきました。昼はスノーケリング、夜はヤモリと牛の声を聞きながら天体ショー。自転車でくるっと回れてしまう世界に「星の王子さま」を思い出しました。

パンとワインのマリアージュ

久しぶりに結婚披露パーティーの御招待。艶々に輝くデコルテの花嫁はブランジェ浅野屋の浅野まき社長、そして新郎は銀座のフレンチレストラン「ロオジエ」の中本シェフソムリエ…これが本当のマリアージュです。終始笑いに満ち、リラックスした時間はあっという間に過ぎてしまいましたが、パンとワインはずっと相思相愛です。

日曜のパリの過ごし方

7月出張の帰りにパリに寄りました。夕方の便で帰国する日は日曜日。滞在していたレピュブリックから自転車でひとっ走り、セーヌ川を渡って14区のカルティエ財団のギャラリーまで「グラフィティ展」を見に行ってきました。途中マルシェで果物を買い、日曜でもショッピングが楽しめるマレ地区のユダヤ人街でファラフェル(ピタパンサンド)をほおばり、帰りには見逃すほど小さいけど優秀なパティスリーPain de sucreでミントのエクレアをゲット。口の温度が1℃マイナスになったような清涼感はさすがです!というわけで、ぜんぜんカロリー消費にはなりませんでしたが、貸し出し自転車ヴェリブの人気も高まり、ますます自転車で走りやすくなったパリをペダルをこいで本当に実感しました。自転車でパリ、オススメです。

何もない贅沢

コリーヌ・ド・コロンビエ、それは三ッ星シェフミッシェル・トロワグロが何の変哲もない近隣の田舎にオープンしたオーベルジュ&レストランです。カドルと呼ばれる船のような鳥の巣のような丘の上の小屋に一晩泊まらせていただきました。トトロの家からインスピレーションを得たという麻布を編んだ天井の寝室で就寝。子供にもどったようなうきうき感です。朝は手作りのブリオッシュに産みたて卵、近所の農家で作るヨーグルトで最高の朝食。だんだんもやが晴れてきても、動くものは牛くらいしか見えません。信じられない静寂とマイナスイオン…。積極的な田舎暮らしがおしゃれなリゾートとして成立するフランスにあらためて脱帽です。

夏の道連れ、お疲れさま!

今年の夏、一番活躍したのが、フランスの葡萄畑からパリ、沖縄、八重山まで私につきあってくれた神保町大和屋履物店の桐の下駄です。かわいそうに、石畳に当たってずいぶん減ってしまいましたが、からっ、ころっと歩く度に軽やかな音を立て、驚くほど軽いこの下駄、慣れたらすっかり手放せなくなりました。来年の夏、またお世話になります!

2009年7月3日

Un apres-midi à Pessac-Léognan

冷えたロゼに限ります
日本が本格的な夏に突入する前、久しぶりにフランス出張。ぶどう畑を訪問するのが今回の目的でした。
訪問したボルドーのグランクリュCh.Haut-Bally(シャトー・オー・バイィ)のシャトーのテラスで、ぶどう畑を見ながらランチを頂きました。「肉を焼くならカベルネ・ソーヴィニョンの枝が一番よ」とほほえむマダム。キッチンの暖炉には大きな牛肉の塊が…。
6月末のこの日外の温度は34度。こういう暑い日はほどよく冷えたロゼに限ります。えっ、せっかく偉大な赤ワインで有名なグランクリュのシャトーに来て、なんでロゼなの?と思われるでしょう。


オー・ブリオンのロゼ
何年か前ですが、同じペサックレオニャン五大シャトーのCh.Haut Brionに勤務する友人宅に食事に行ったときふるまわれたのがオー・ブリオンのロゼ。忘れられないエレガントな美味しさ!(注:Ch.オー・ブリオンにロゼはありません)シャトーのファミリーと従業人にだけ配られるのです。なぜ売らないのにロゼワインがあるのでしょう?

赤ワインを作るとき、果皮の色をしっかりつけるため、まだ発酵していない果汁を抜き取る方法が昔からあります。そのまだ色の淡い果汁、当然捨ててはもったいないですよね。それを発酵してロゼワインを作るのです。この方法をセニエ(瀉血)と言います。う〜ん、抜き取るイメージ…。ちょっと怖いですか?でも赤ワインを飲むとき、「畑の血だなあ〜」とありがたく思うのは私だけでしょうか。

というわけでオー・バイィのロゼも、赤ワインの副産物。こちらは商品化されてますので、機会があったらぜひ!もともと赤ワインのみを生産しているオー・バイィの特徴は、なんと同じ畑にいろんな品種のぶどう樹が混じって植えられていること。普通は品種別に畑が別々になっているんですが、私も初めて見ました。一列にいろんな品種が混在してます。ということは、品種によってぶどうの実も熟すタイミングが違うので、機械で一気に収穫できないのです。当然手摘みですね。左がカベルネ・ソーヴィニョン、右がメルローの葉っぱです。


もちろん、ひんやり空気の冷たいセラーでグランクリュの赤もテイスティングさせていただきました。ヴィンテージが違ってもブレがなく、すとんと落としどころが決まっている垂直型のエレガントで格調高いワイン、という感じでした。

種もしかけもない伝統的な作り方
なぜいろいろな品種のぶどう樹が混じっているかと言えば、それはご先祖がそんな風に植えたから。ちなみに白ワイン品種は植える予定ないそうです。種もしかけもない伝統的な作り方。自然とご先祖様のお陰で2009年の夏もこうしてグランクリュの畑にはすくすくとブドウの実が育っているのです。暑い中涼しげに笑顔でゆっくりと手を振って見送って下さったマダムの印象がオー・バイィのイメージとぴったり重なりました。

2009年6月6日

Juin 2009 Nouvelle Caledonie


ニューカレドニアの秋
スーパーでふと手に取ったソーセージ
「えっ!これは鹿?」確かに鹿の写真です。

長いレシピ本の翻訳が終わり、5日間のお休みをいただいて、ニューカレドニアに行ってきました。南の島イコール常夏と思っていたのが、南半球にあるフランス領ニューカレドニアの6月は、saison fraîche(涼しい季節)、つまり秋でした。それとは知らずサンオイルにビーチサンダル、ビキニをスーツケースに詰めて来た夏仕様の私…。
ヌメアに移住した友人夫婦のおかげで気を取り直して天国に一番近い島ニューカレドニアの自然と食を発見して来ました。
ニューカレドニアと聞いて鹿を思い出す方は少ないと思いますが、こちらの鹿肉は日本の蝦夷鹿とは違いもっと繊細で優しい味。ニューカレドニアのローカルなレシピ、salade du cerf(鹿サラダ)は現地の人が「ソヨ」と呼ぶ醤油で味つけした、鹿の生肉のマリネ。これが絶品なのです。


首都ヌメアのマルシェに連れて行ってもらいました
大きな伊勢エビ、マングローブ蟹、そして鰆までもが船から直接運ばれてきます。日本でも人気の「天使海老」は地元の人が行くレユニオン島料理専門店でいただききました。とびきり新鮮で身がほんのり甘く、つけ合わせはライスで大満足。基本的に米のある国ならどこでも生きて行ける!と私はいつも海外に出る度に米のおいしさに感動します。


南の島ならばフルーツが美味しいのは当然です
「コロソル」というトゲだらけのこの果物は、熟すとバナナを思わせるねっとりとした果肉、でも適度に繊維があって、パパイヤのようなムワッとした独特な香りなのです。コロソルはアイスクリームが特におすすめです。


そして一番感動したのは、赤ちゃんの頭ほどある大きなグレープフルーツ
ずっしりと重くたっぷり果汁を蓄えたそのグレープフルーツを食べ始めたら、蟹を食べるのと同じくらい皆静かになってしまいます。甘すぎず、ほんのり胡椒の香り。まさに天国の味です。ニューカレドニアの東側沿岸は熱帯性の気候で、西側は乾燥したサバンナ気候、この一帯に実はたくさん柑橘類の果樹園があるのです。


行ってみてびっくりの“何も知らなかったニューカレドニア体験
やっと晴れ上がった夜空には南十字星と天の川がくっきりと。今度は真夏に戻ってこようと空を仰いで思いました。

2009年5月7日

Flamme à Tokyo


タルトは甘い?
タルトと言えば甘いお菓子と思う方が多いでしょう。ではタルトフランメ(tarte flammé)をご存じですか?薄〜く伸ばしたパン生地に、チーズやオニオン、ベーコンの細切りを散らし、高温の薪窯で、炎(flamme)に撫でられるようにして一瞬で焼き上あげる、薄焼きピッツァのようなアルザスの名物、塩味のタルトのことです。アルザス語で”フラメンキッシュ“別名タルトフランベとも呼ばれ、地元では、子供のおやつ、軽食、ワインやビールのおつまみとしてポピュラーなローカルファーストフードなのです。


そのタルトフランメのクリエーターとして、コルマールの近くの村、クリスマス市で有名なカイゼルベルグ(Kayserberg)に専門店Flamme & Co(なんともユニーク!”フラメンコ“と読みます)をオープンしてしまったのが、MOFシェフ、ミシュラン1つ星レストラン「ル・シャンバール」Le Chambardのオーナーシェフオリビエ・ナスティです。

ナスティと私の出会いは2006年
彼の初めて来日したときに遡ります。それこそ甘いデザートバージョンのタルトまで含めて数十種類、アメリカをイメージしたハンバーガー風から、寿司風、地元の新鮮なエスカルゴを使ったタルトフランメ…止まらるところを知らないそのアイデア。「タルトフランメを通して世界にアルザスをアピールしたい」という彼の熱意に動かされて、いつのまにか私も東京でタルトフランメを紹介したいと心に炎が灯りました。

そしてこの4月に開催された新宿伊勢丹の「フランス展」で、念願のタルトフランメ東京デビュー!3年越しの願いが実現しました。 クラッシックなオニオンとベーコンのタルトフランメの他に、生ハムとハーブのサラダ、帆立貝とさつまいものカレー・ジンジャー風味などの創作タルト、りんごとシナモン、ブラックチェリーなど甘いデザートタルトフランメまで6日間で1000枚以上のタルトを焼き、地元アルザスの新聞でもニュースとなりました。

ピッツァより美味しい!
子供が大好きというので、会期中、何度もご来場くださったお客さまも。美味しいものは世界共通なのですね。地方の数だけ魅力的で手軽なローカルファーストフードがあるのがフランスの魅力でもあります。「フラメンコ」は今ストラスブルグ店のオープン準備中、いつか東京にもできるとうれしいですね。今回実現に向けてご協力いただいたブランジェ浅野屋さん、そして何度もアルザスまで足を運んで下さった伊勢丹の皆様に感謝いたします。

2009年4月17日

Bourbon pointu récolte 2009

幻のコーヒー豆「ブルボンポワントゥ

ブルボンとは、もちろんフランスのブルボン王朝、
ポワントゥとは““先のとがった”という意味のフランス語Pointu。
貴婦人の指先のようにほっそりと細長いこのコーヒー豆を、
その昔ポンパドール夫人も嗜んでいたと思うと、背筋も伸び、カップを持つ小指も思わず立ってしまいます。                



3年前の発売時には30秒で売り切れたという、
この幻のコーヒー豆を味わう機会を、レストランLe 6e Sens のドミニク・コルビシェフが与えてくれました。

なんでもアフリカはマダガスカルの近くにある、
レユニオン島でしか栽培されないという希少な豆で、
コーヒー豆の原種に最も近く、ルイ14世によって見い出されたそうです。
その当時レユニオン島はブルボン島と呼ばれ、
特にルイ15世がこだわったこのコーヒーはベルサイユ宮殿で愛飲されていました。その後ご存じのように王制が革命によって崩壊し、さらに1806年島を襲ったサイクロンのためにコーヒー樹が失われ、島の産業がすっかりサトウキビ中心になってしまって、この世から消えかけてしまった「ブルボンポワントゥー」なのですが、なんと日本のコーヒーメーカーUCC上島珈琲さんが、フランス政府農業研究開発国際協力センター(CIDAD)と実験を積み重ねた結果2002年栽培に成功し、めでたく復活したのだそうです。



はるばる日本まで空輸で
やって来たその希少なコーヒー豆(限定300キロ強)を、せっかくなら豆の歴史に関係のあるフランス人に味わっていただきたい…というUCCさんのお声がけにドミニク・コルビシェフがならば丸ごと味わってしまおうと、コーヒーをテーマにしたランチをアレンジ。

集まったのはフランス人ジャーナリストのドラ・トーザンさんとワインプロモーターのジェニファー・ジュリアンさん(NHKの「フランス語会話」で覚えてらっしゃる方もいらっしゃるでしょう)。なぜかいつもドミニクの周りには美女が集まるのです…。



そして肝心のコーヒーですが、お湯を注ぐと、
普通のコーヒーの倍以上の高さまで、ふんわり、むっくりとふくらみます。カフェインが通常の豆の1/2と言われるブルボンポワントゥーは、まろやかでエレガント、飲み疲れず、なんともいやされるピュアな味わいでした。今はこの希少価値の高い豆の栽培を現地の産業として定着させるため、毎年すべて豆を買い取っているというUCCさん。
日本の企業の努力によって甦るフランス王朝のコーヒーの味…カップの中にロマンと冒険心を感じました。

2009年2月25日

Un passage de M. Serge Dubs, Meilleur Sommelier du Monde 1989


ヴァンクリーフ&アーペルのデザイナーによるもので、
デュブスさんのためのオリジナル」


ソムリエさんの襟元に輝く葡萄の房のバッジ、数多く見てますが、
こんな素敵なデザインは初めて。
そしてMSMのイニシャルの意味は… 
Meilleur Sommelier du Monde、つまり世界最優秀ソムリエの略!

その持ち主は、アルザスの三ツ星レストラン「オーベルジュ・ド・リル」
シェフソムリエ、セルジュ・デュプス(Serge Dubs)氏。
1989年度世界最優秀ソムリエのタイトルを獲得し、現在はフランスソムリエ連盟の会長、世界ソムリエ協会の副会長さんです。

今回は“とてもリーズナブル&なかなかイケル”、ボルドーのジネステというブランドワインのプロモーションのために来日。大阪と福岡でテイスティングセミナーで通訳をさせていただきました。「高いワインを売ることがソムリエの仕事ではないんです。」と心強いお言葉。

オーベルジュ・ド・リルに勤務して36年、毎日昼夜お店に立ってお客さまにサービスし、お店が休暇の時はこうして世界中を回ってでワインの楽しみ方を伝授しているのだそうです。「まず、先入観も知識も捨てて、ごくんとワインを飲んでみてください。自分の直感や五感をフルに使ってワインの性格やアイデンティティつかんでください。脳と身体が一度に動けば、決して忘れることはありません」とデュプス氏のアドバイス。“千里の道も一歩から”…こうして自分なりにワインのカルテを頭の中にファイルしてゆけば、無理なくいろんなワインを楽しめるようになるのかもしれません。


「ニューオータニ博多の菊地シェフと」

56歳には到底見えないすばらしい姿勢と丈夫な身体の秘訣は?
朝ご飯をしっかり食べる、お酒は適量、そして運動(ランニングとサッカー)、仕事を楽しむことだとか。確かに毎朝、和朝食をがっつり召し上がってらっしゃいました。
思ったことをすぐに確実に動作に移せるのがプロだとすれば、そのためにはまずいつまでも健康な身体が必要なのですね。
そして、セミナーの後、おびただしいワイングラスがテーブルに残っているのを見て、「こんなにたくさんグラス洗うのは大変だよね」とため息。現場の若いソムリエさんたちを励ましていました。人を思いやることが、サービスの第一歩、大切なことを教えていただいた2日間でした。

2009年1月11日

Savoir goûter le SAKE à la française

                                                                 photoby:Stephanie Slama


2009年のお正月、皆様どのように過ごされましたか?

東京ではずっとこの季節らしい、きりっと寒い好天が続いています。
松が明けてまだ間もない今週、フランコ・ジャポネなテイスティング、
味な企画のご案内です。

フランス人シェフ、ドミニク・ブシェと金沢の酒蔵「福光屋」さんのコラボレーション、
昨年6月に新宿伊勢丹B1で開催いたしましたが、好評につき再登場です。
それぞれ個性の異なるお酒に、フレンチの肴を一皿ずつ合わせます。

リーデルの大ぶりな大吟醸グラスで、極上のマリアージュをお楽しみください。
お買い物の合間、お仕事の帰りに立ち寄られれば、束の間ではありますが、
パリと東京を瞬間往復するような不思議で素敵な時間が待っています。
(Barカウンターは5席のみ、ぜひ譲り合ってのご利用を。)

そして、パリから来日中のドミニクは17(土)、18(日)に来店します。
フランスの食と日本酒は本当に合うの?
本人に尋ねるのが一番です。


スタイリッシュなお酒のボトルはワインと間違えるほど。
純米酒風味のフォワグラのテリーヌ(会期中特別販売)と合わせて、
ご自宅でもフランコ・ジャポネな時間をさらにゆるゆるとお楽しみください。

日時:2009年1月14日(水)〜20日(火)
14時〜20時(ラストオーダー:19時)
場所:伊勢丹新宿店 本館地下1階 粋の座 BARカウンター


MENU
■純米大吟醸 芳醇原酒 「ゆり」
フロマージュのアシェット(4種) 
洋ナシとクミンのコンフィチュール(1,890円)

■山廃純米 濃醇辛口 「ふく」
 鴨のフォアグラ 純米酒風味 
 バルサミコのジュレを添えて(1,680円)

■純米 完熟 「さち」
スモークサーモンとフレッシュチーズのルレ  
シブレット風味(1,470円)

素材の持ち味を生かした繊細で美しいフレンチとシェフ自らがセレクトした
福光屋の純米酒「ゆり」「ふく」「さち」、それぞれの調和をお楽しみいただけます。

2008年12月29日

fermeture de fin d'année



今年も残すところわずかとなりました。

12月に入り出張先のParisでほんの一瞬でしたが
シャンゼリゼのクリスマスイルミネーションを鑑賞しました。
LEDの普及に伴って電飾の色も雰囲気も年々進化していることにあらためて驚きました。

しかしながら、焚き火、キャンドル、月明かり…
昔から夜の明かりはどこへ行っても人の心に郷愁やロマンチックなエモーションを呼び起こすことに変わりはありません。今年も世界中で多くの変動がありました。
来年こそ、平和と希望が少しでも満ちあふれることを祈ります。

心に灯を灯し、どうぞ温かい年末をお過ごしください。

2008年12月20日

Le Dîner du Gala par un chef de ceinture noire



2008年は日本とフランスの友好関係が公式に始まって
150年という記念の年であることご存じでしたか?

毎年、在日フランス企業の皆様、
フランス、欧州のビジネス、文化に関わる方々が多く集まる
在日フランス商工会議所のガラディナーのために料理を作りに来日することになった
ティエリー・マルクスシェフ。

「今年は日本と関わりのあるシェフ」をということで白羽の矢が立ちました。
マルクスシェフは2000年に私が日本に招聘してから、毎年のように来日をして料理を披露、プライベートでもレストランがオフになると日本に滞在し、柔道の稽古に講道館に通うという根っからの日本贔屓です。

9月から何度も試作を繰り返し準備してきたたメニュー、
中でも好評だったのが、オマールのショーフロワです。

真っ赤なピッキーヨ
(赤ピーマン)のグラッサージュをまっとったオマールの温かいファルスを囲むのは、
ほんのり甘くさくさくの根セロリのクルスティアン。



「これはもしかしてLe pays du soleil levant (日の昇る国、ニッポンの象徴)?!」

とフランス人ゲストも大喜び。
根セロリのロワイヤルに薄くオマールのジュレを薄くひき、オマール海老のジュの泡をふんわりのせて…。オマール海老も根セロリもその姿はどこにも見えないのに、口の中でいろいろな食感と温度差が響き合いながら、はっきりと感じとれる2つの主食材…21世紀の現代フランス料理のおもしろさですね。

673名のお客さまにフランス料理を提供するのは、マルクスシェフにとっても私にとっても初めてのこと。開催場所となったホテルグランパシフィックLEDAIBAのスタッフの皆さんのご協力あってこその成功です。バックヤードはご覧の通り。料理を仕上げる4つのディッシュアップの間を全速力で走り、箸を手にチェックに廻るマルクスシェフ。
19時30分にアミューズブッシュをお出ししてから予定の1時間40分ですべてのお料理を提供しました。

本当に皆さんお疲れ様でした!





四谷三丁目からヘルプに駆けつけて下さったSUCRE SALEの中西シェフにもMERCI。

前週には別の都内のホテルで開催された7人の星付きシェフたちによるガラディナーのためにも来日していたマルクスシェフは2週間のうちに日仏間を二往復されたことになります。
最近では柔道よりも剣道にはまっているマルスシェフ、
注文した竹刀と木刀を抱えて帰国の途に尽きました。
シェフの仕事には体力も不可欠とはわかっているもののタフです…。
武道派シェフ、マルクスは今頃ボルドーで竹刀を振っていることでしょう。


2008年11月30日

Le 18 novembre, Une journée étoilée



11月18日、服部調理師学校で、
7人のフランス人シェフによるプロのための料理講習会通訳の日。
7人合計でミシュランの星15個になるとか。

星と言えば、
この日11月21日に発売になるミシュランガイド東京2009の記者発表があり、去年同様私のまわりは前夜からそわそわ、わさわさしていました。

集まった人、約100人。
講習会の一番手は三ツ星ピラミッドのアンリ・ルルーシェフ、
2番目はパリのタイユヴァンのアラン・ソリヴェレスシェフ
(彼がまだシャンゼリゼのオテル・ヴェルネにいた頃日本へ招聘して以来の再会です!)。

ソリヴェレスシェフの
「トゥルトー蟹のレムラード」のために生きたままやってきたトゥルトー蟹。まだ元気です。
1.5キロは手に持つとずっしりと重く、硬い甲羅の中にはしっかりと身が詰まっています。丸っこく愛らしい形に、蟹座の私は他の食材にはない愛着を感じました。



午後になって、
ティエリーマルクスシェフが斬新な円錐形のウズラの料理を披露。

レジス・マルコンシェフの弟子で、独立して5年後に二ツ星を獲得し、
昨年MOF(フランス最高職人賞)にもなったクリストフ・ルールシェフの美しい皿に引き続き、カンヌのブリュノ・オジェシェフが登場。
クラシックなフォワグラのテリーヌはほうれん草とアンディーブの3つの食感を楽しむもの。“例えばほうれん草とアンディーブの代わりにピーナツとフレッシュなアプリコットを使ってもいいね”と。さりげなくこういう代案が出るところがうれしいです。
ベテランのジル・トゥルナルドルシェフのタイカレーを思わせるような香り高い真鯛の料理の後、いよいよ三ツ星レジス・マルコンシェフの登場。



キノコの魔術師とも呼ばれるマルコンシェフ。
何年か前にも講習会の通訳をさせていただいたのですが、そのときに小さなモリーユ茸とレシピを頂いて、クレーム・キャラメルを家で作ったのを思い出しました。相変わらず学校の先生のように真面目で穏やかな眼差し。
キノコを前にするとさらに目が輝き、話がとまりません。

北海道の蝦夷鹿(すばらしく美味しい鹿肉! とシェフも絶賛)にセップ茸のプラリネをまぶし、セップ茸のバターでガルニチュールを炒め、セップ茸の香りいぱいのサバイヨンソースを添えました。前夜のガラディナーで披露したばかりの料理だそうですが、デモンストレーションが始まってから思いつきでどんどん変化してゆきます。「もっと美味しくできる」「料理は日々少しずつ変化するもの」私がたくさんのシェフから学んだことを、まさに目の前で実行しているマルコンシェフ…
料理に向かう集中力を隣にいて強く感じました。

午後に発表になったミシュラン東京2009の星の動向で、
昨年9月にお店をオープンされた
下村シェフのEDITION KOJI SHIMOMURAが2つ星を獲得したことがわかると、
すかさず会場にいらした下村シェフへ、
マルコンシェフからFELICITATIONS!(おめでとう!)の一言。

そして、
「あなたの下で働いた人がフランス各地で今シェフとして活躍していますが、彼らに教えたことは何ですか?」という下村シェフからの質問に、
マルコンシェフは
「料理人には2つの成功があることです。
一つはレストランが星を取り有名になり、料理人として輝かしいキャリアを達成する個人的な成功、もう一つはひとりであるいは家族と、または限られたスタッフと毎日お客さまのために料理を作ることに喜びを見いだせること。
決して広く名前を知られることがなくてもそれは料理人としての幸せ、
それも成功であるこということです。」と答えました。

感動のため、一瞬静まる会場…。
こんなすてきなやりとりを訳せさせてもらえるなんて、
通訳冥利に尽きるひとときでした。



18時、講習会終了後ミシュラン東京2009のレセプション会場である表参道ヒルズへやってきました。おめでとう!来年こそは…そんな会話が飛び交う会場で、お互いのガイドブックを手に語り合う二人を発見。一人はマスヒロの東京番付というレストランガイドを出したばかりの山本益博氏、もう一人はミシュランマップ&ガイドディレクターのクリストフ・ドゥレ氏。

ミシュラン東京2008のセレクションをグループで検証された益博氏に対し、

「フードジャーナリズムとは全く異なる独自の調査と評価がミシュランの信条」
と語るドゥレ氏は、
「ある日三ツ星が500軒になっても何の不安もないですね、三ツ星の価値はいつどんな国でも同じ。“ああやっぱり三ツ星だ”と行く人を満足させるはず」と自信たっぷり。

「いろんな価値観があるからこそ楽しい。
ガイドブックは一つじゃだめ。
せめて3つはないと。
トップ3つのガイドすべてで高い評価を受けていたらそのレストランは本物でしょう。」と益博氏。

そういえばNY生まれのザガット東京というガイドもありますね。
この際3つのガイドブックに目を通して、美食都市東京を食べ歩くのも楽しいかもしれません。私自身がミシュランガイド東京に願うことがあるとすれば、写真はなくてもよいのでもっと掲載店を多くして欲しいこと。本場フランス版のようにぶ厚く、そして星無しでも安心して利用できる魅力的なアドレスをたくさん掲載してほしいです。

↑フランスで“ビブ”と呼ばれるミシュランのキャラクター“ビベンダム”も、
日本に来ると“ミシュランマン”に。